冬の電費

EVだけの生活になって、初めての冬を越えようとしています。

実感したのは、冬はEVの電費が悪い!ということです。暖房に電気を使うから、極端に電費が悪くなります。冷房はヒートポンプなのですが、暖房は電熱器を使うようですね。マイナス20-30度くらいでも問題なく動くことが求められるEVは暖房は簡単にヒートポンプ化できないようです。

今日のメーターコンソールの写真。

冬のメーターコンソール

朝など始動してしばらくは、瞬間的にkmあたりの消費電力量が1kWh近くになることもあります。安定して高速道路などを走ると、外気温0度で暖房をつけっぱなしでも、270Wh/kmくらいに落ち着く感じですが、それでも夏と比較して2-3割は電費が悪化している印象です。

写真のように、10km走って340Wh/kmだと、我が家のモデルX 60Dでは、フル充電でも180kmくらいしか走れない計算になります。まあ、それでも実用上困ることはあまりないかもしれません。

以前の記事で「電気自動車とガソリン車の経済性」として、年間の走行距離などに応じたコスト比較を書いたのですが、冬を考慮に入れると、実態と合わないし、ガソリンもだいぶ高くなったようなので、再計算してみました。年間の平均電費ということで、テスラモデルXをおよそ300Wh/km、BMW i3を160Wh/kmとして計算しています。

燃費 料金体系 年間3000km 年間1万km 年間3万km
ガソリン 高級車 10km/L ハイオク(146円/L) 43,800 146,000 438,000
エコカー 20km/L レギュラー(135円/L) 20,250 67,500 202,500
電気(テスラ) 300Wh/km
+3kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 24,439 50,164 123,664
スマートライフ(17.46円/kWh) 34,833 71,499 176,259
スタンダード(30.02円/kWh) 59,890 122,932 303,052
電気(i3) 160Wh/km
+1kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 10,351 24,071 63,271
スマートライフ(17.46円/kWh) 14,754 34,309 90,181
スタンダード(30.02円/kWh) 25,367 58,989 155,053

我が家の場合、年間1万km程度なので、表の中の色をつけたところが比較対象です。テスラモデルXでもプリウスクラスのエコカーより安く済んでいるようです。いや、実際は急速充電のためにテスラチャージングカード月額3,250円を維持しているので、4万円くらいプラスだから、そうでもないな…。

冬の電費は大幅に悪化しましたが、それでも同クラスのガソリン車よりはEVの方が確実に維持費は安いようです。でも電気の基本契約はEVのためにだいぶ容量上げてるので、本当はどうなのか、なかなか計算は難しいかもしれません。

テスラモデルXとBMW i3の自然放電

電気自動車の扱い方は、基本的にスマートフォンやPCと一緒です。何もせずにそのまま放置しても、自然に電力は消費されます。リチウムイオン電池がもっとも大きくダメージを受けるのは過放電ですから、電池の残量がゼロになるのはもっとも避けなければいけない事態と言って良いでしょう。

リチウムイオン電池は制御の難しい電池なので、常に電池側にBMS(電池管理ソフトウェア)があり、可能な限り過放電にはならないように制御されています。とても簡単に言えば、リチウムイオン電池の「残量ゼロ」は本当のゼロではなく、ある程度余力を持っているので、あまりユーザーはそれを意識する必要はないようになっています。

そうは言っても、電池には内部抵抗があり、電圧がかかっていれば必然的に電力が消費され、それは自己放電と言われます。一般的にはリチウムイオン電池は比較的自己放電が大きく、充電した状態で放置すると、常に一定比率の電力を消費するため、使い続けるためには定期的な充電が欠かせません。リチウムイオン電池には電極の素材によって種類がありますが、傾向としては、充放電性能を高めると自己放電は大きくなり、自己放電を抑えようとすれば、充放電性能が抑制的に(一度に放電できる電力の比率が小さく)なる傾向にあります。

テスラとBMWはこのバランスが大きく違います。特にテスラの場合は、自己放電だけでなく、待機時の消費電力がかなり大きい印象があり、単に駐車しておくだけでも、残り電力量が大きく減少します。

ちょうど今回約1週間の旅行で2台とも充電しない期間があったので、電力消費量を比較してみました。

初期状態 6日後 1日あたり減衰率
テスラ モデルX 58% 32% 4.3%
BMW i3 95% 93% 0.3%

初期条件が違うので、単純比較できるわけではないですが、i3は満充電なら1年くらい放置できる計算になりますが、モデルXは1か月ももたないことになります。

別記事でテスラモデルXの1日あたりの電力消費は「走らなくてもだいたい2kWh」としたのですが、今回の4.3%で計算すると、60kWh x 4.3% = 2.58kWhということになるので、おおまかには一致しているわけですが、2kWhよりは多いようです。

アプリから接続するときに、テスラは比較的すぐに応答があるのに対して、BMWは何度か接続タイムアウトすることもあり、おそらく省電力の考え方が違うということもあるのだと思います。テスラには各種の省電力設定があり、省エネモード、スマートエアコンディショニング、キャビンオーバーヒートプロテクション、常時接続の4項目は電池容量維持に効果があり、すべてオフにすれば、1日の消費量は1%以下になるようです。

人によっては、電気自動車は面倒だと感じるかもしれません。しかし、電池残量をそこまで意識しなければいけないことは非常に少ない中で、非日常でも安定して使うための知恵であって、普段意識することはほとんどありません。

割安な充電方法

我が家のモデルXは納車から半年を超えました。テスラチャージングカードが有料になります。とりあえず維持することにはしていますが、果たしてテスラチャージングカードは持ち続けるメリットがあるのでしょうか。

ガソリン車、ディーゼル車は、どこでガソリン(軽油)を入れても、せいぜい価格は10-20%程度の違いにしかならないので、およその走行コストはかなり明確に計算できます。それに比べるとEVは計算が難しい。ポイントは2点あり、第一に走らなくても電力を消費すること、第二に充電方法によってコストが大きく違うこと、第三にチャージングカードのような固定費が必要であることがあります。

走らなくても電力を消費するのは、主にリチウムイオン電池が自己放電をするからです。我が家の場合、テスラモデルXでおよそ2-3kWh/日程度、BMW i3の場合でおよそ1kWh/日程度は消費されます。年間にすれば300kWh~1MWhくらいあるので、無視できる金額ではありません。ガソリン車でも、エンジンオイル交換や水抜き剤のような固定費は必要なので、固定費は除外して考えても良いと思うのですが、電費を計算するときには、どうしても気になります。

その自己放電分も含めて、電力はどんな方法で充電するかによって、費用が激しく違います。その違いのレベルはガソリンの比じゃないのです。おおまかに充電方法による1kWhあたりのコストを一覧表にしました。走行費用はテスラモデルXを想定しているので、対比するガソリン車は同クラスでリッター10km程度走るハイオク専用車(ハイオクガソリン140円想定)としています。

充電方法 1kWhコスト(税込) 走行1kmあたり ガソリン比
1 無料急速充電 0 0 0.0%
2 家庭での充電(電化上手・深夜) 12.25 2.70 19.3%
3 スーパーチャージャー 17.28 3.80 27.2%
4 家庭での充電(スマートライフ・深夜) 17.46 3.84 27.4%
5 NCSメンバー 50kW 19.44 4.28 30.5%
6 家庭での充電(スタンダード) 30.02 6.60 47.2%
7 NCSメンバー 20kW 48.6 10.69 76.4%
8 NCSゲスト 50kW 64.8 14.26 101.8%
9 NCSゲスト 20kW 162 35.64 254.6%

我が家の場合、スーパーチャージャーは無制限で無料ですが、今販売しているモデルは年間400kWhを超えた分は上記表の通りです。それでもスーパーチャージャーは急速充電器の中では格安です。

注意しなければいけないのは、急速充電器の場合、上記の表はあくまで理論的最大値で、実際にはバッテリーの電圧(車種によって違う)や、バッテリーの充電状態(80%充電あたりをピークに、0%に近い方は緩やかに、100%に近い方は急速に充電効率が落ちる)によって違うので、その分だけ電力は割高になります。

NCSゲストの場合、充電器の出力にかかわらず、無条件に1分50円かかりますから、充電器が20kWの場合、ガソリンよりもはるかに高い走行コストになります。ガソリンの場合、給油にかかる時間は関係なく、1リッターあたりで支払うのに対して、電力は実際に充電された電力は関係なく、充電した時間で支払うことになっています。つまり充電器の出力を下げると利益が増えるわけで、これは本当におかしな話なのですが、どうも電気事業法と計量法によってそのような料金体系となっているようで、これはEV普及のための大きな障害ではないかという気がします。

テスラのスーパーチャージャーは、方針として「1kWhあたりの料金設定をすることが正しい」と明言していて、実際に米国では1kWhあたり12セントから24セント(州によって違う)の価格設定となっていますが、日本では時間あたり課金となっています。古い法令がEVのインフラ普及の妨げになっている現状は、早く変えて行かないといけないですね。

比較表を見て明らかなのは、結局は家庭で充電する方が基本的に割安であること。それより安くするには、無料の急速充電器をうまく活用することです。テスラの場合は、スーパーチャージャーに限っては一定枠までは無料で充電できたり、ニッサンのZESP2などでは月額会費を払っている限りNCSも無料で充電できます。BMW i3はこのあたりの優遇策が何もなく、1年過ぎるとチャージングカードにも月額5,000円(消費税別)必要なので、割高感は否めません。我が家ではi3で遠出はしないので、1年過ぎたらChargeNowカードは退会しようと思っています。

テスラチャージングカードはひとまず持ち続けることにします。メリットは月額3,250円(税別)を支払って1回30分のCHAdeMO急速充電あたり1,050円(税別)安くなることなので、おおむね月間3回CHAdeMOを使うかどうかで微妙なのですが、利便性との兼ね合いも考えて様子を見ます。

折しも佐野にスーパーチャージャーが開設したり、スーパーチャージャーも増えているので、CHAdeMOを使う必要がなくなってくれば、間違いなく解約と言いたいところです。

急速充電器のユーザー体験

Webサイトやスマートフォンのアプリなどの設計では、よく「UIよりUX (User eXperience = ユーザー体験)」などと言われることが多いようです。画面の見た目よりも、利用目的に応じて必要な行動全体を見渡して、表示方法や操作方法をデザインしましょう、というような意味です。

そうした観点で考えると、どうも急速充電器、特にCHAdeMOのUXは決して良くないのです。何が快適じゃないと感じるのか、考えてみました。

  1. 時間が読めない
    一番困ると感じるのはこれです。急速充電器の場所はナビやEVsmartのアプリなどで探すことができますが、いつ充電終了するのか、時間が読めない。誰か他の人が充電中かもしれず、他にも待っている人がいるかもしれないので、いつ充電開始できるかは行ってみないとわからない。しかも待った挙句、充電中のEVの持ち主が現れないこともあります。
  2. 結果も読めない
    充電開始できたとしても、多くのCHAdeMO充電器は30分の時間制限となっているため、20kWの充電器で最大10kWh、50kWの充電器でも最大25kWhしか充電できない。しかも実際に充電できる電力量はバッテリーの構成や車両側と充電器のソフトウェアのアルゴリズムによって少しずつ違い、30分後の状態が正確にわからない。30分後に継続して充電(おかわり)できるかどうかも、次の人が来るかどうかに左右されるので、わからない。
  3. 操作が煩雑な上に統一されていない
    CHAdeMOの場合、認証カードが必要。自動車メーカーから提供されていたり、月額費用を支払って加入している場合は、持っているはずですが、そうではない場合にはゲストカードが必要だったり、さらに電話でカード払いの手続きをする必要があったりします。充電器本体で認証カードを操作するものもあれば、認証カードは別の装置を使う場合もあります。認証操作をしなければ充電コネクターが外れない充電器もあれば、充電コネクターをEVに差し込んでから認証する場合もあります。認証カードはEV車両に紐づけられていて、別のEVに使いまわすことはできないのに、なぜ認証カードで操作しなければいけないのか理解に苦しみます。

テスラのスーパーチャージャーは、CHAdeMOよりは遥かに洗練されたUXになっています。

バレーパーキングの六本木を除いて、スーパーチャージャーは最低でも4基設置されているので、充電待ちが発生しているのを見たことはありません。(日本よりも台数がけた違いに多い米国では、待ちが発生して問題になっているようです)

充電を開始すれば、バッテリー容量の大きいEV(テスラの現行モデルでは最大100kWh)でも、30分~1時間程度で充電は終了するので、よほど時間優先の状態でもなければ、常に結果は100%充電です。

操作はほぼ何もなく、充電器のコネクターを車両に差し込むだけです。充電器は自動的に車両を認証します。充電費用は車両の契約によって違いますが、有料の場合でも充電量に応じて、あらかじめテスラに登録しているクレジットカードで自動的に決済されます。

それにしても、CHAdeMOの30分という区切りは、なかなか中途半端で扱いにくいです。10~15分くらいで終わればトイレ休憩で良いのですが、食事や買い物の合間に充電したいニーズだと、逆に30分で車両を移動しなければいけないのが非常に不便です。ショッピングモールなどでは、駐車場とショップやレストランが離れていて、しかも車両を移動する先を探すのにひと苦労ということも多く、30分で3割くらい充電できたけど車両を移動しないと!というような状況が発生しやすく、これはストレスフルです。

一律で50kW 30分などという形ではなく、利用者のニーズにあわせて出力や充電時間にある程度の幅があり、それも複数の充電器でシェアしたり、順番に切り替えたりするようなしくみがあると理想に近づくのかな、と思ったりします。

そのためには、1か所に複数の充電器が設置されることや、それ以上の台数分の駐車スペースが必要になるわけで、その前提は、やっぱりEVがもっと普及することなのでしょうね。

電気自動車とガソリン車の経済性

電気自動車の走行コストは安いのか?というのも、よく聞かれる質問です。いろいろな条件が違うので、一概に比較するのは難しいのですが、真剣に比較してみましょう。

比較が難しい理由のひとつは、ガソリン車側の問題。ガソリンの価格が変動するし、地域差があるし、乗り方によって実質燃費が大きく違います。そしてもうひとつは電気自動車側の問題。充電方法によって電気代が大きく違い、乗らなくても電気を消費します。電力自由化で電気料金はより複雑になり、電力会社によって電気代も違えば、ソーラーパネルを設置して自前で充電することすらできるのですから、比較は本当に複雑です。

ここはひとつ、話を単純化するため、前提を設けることにします。

  1. 電気自動車本体を購入する経済性については、議論から除外する。
    EVはバッテリー劣化によってリセールバリューが低いとか、その反面、補助金が出るとか、選択肢が少ないとか、いろいろ意見はあると思いますが、ひとまずその議論は除外して考えます。
  2. 燃料費以外の維持費の差額は含めない。
    ガソリン車はエンジンオイル交換の費用がかかったり、ガソリンの水抜き剤があったり、ブレーキパッドが減ったり、ミッションオイルも必要だったりしますが、EVは回生ブレーキがメインなのでブレーキパッドは減らないし、ミッションはないし、エンジンオイルもありません。でもそれなりに自動車を使う前提で考えれば、これらの費用はそれほど大きい割合にはならないので、ひとまず置いておきましょう。
  3. 電気代は東京電力
    ひとまず新電力は考えず、地域によっても電気代は違いますが、自分の場合を中心に東京電力の電気料金をベースに考えます。関東地方の場合、新電力で競争力のある深夜電力を提供している会社はないので、EVは東京電力がベストです。
    我が家はオール電化の電化上手ですが、実はこれ今年の4月に廃止されて、新規契約ができなくなっています。代わりになるのはスマートライフなのですが、深夜電力だけで見ると大きく値上がりしている上に、深夜電力の適用時間が短縮されているので、EVにとっては相当な痛手です。そこで電気代は、電化上手、スマートライフ、スタンダードの3種類で比較してみます。

年間走行距離が3,000kmの場合(都内を想定)、1万kmの場合(都市部郊外を想定)、3万kmの場合(通勤などにも使う地方を想定)で、年間の燃料費を表にしてみました。ガソリン車は走った分だけのガソリン消費(ガソリン価格はgogo.gsの全国平均価格)ですが、EVは乗らなくても電力を消費します。テスラの場合、メーカーの主張は1日の自己放電が1%以下とされていますが、放電以外にも消費していることもあり、経験的にはもっと減るので、1日あたり2kWhとして計算しました。i3はその半分程度です。

燃費 料金体系 年間3000km 年間1万km 年間3万km
ガソリン 高級車 10km/L ハイオク(138円/L) 41,400 138,000 414,000
 エコカー 20km/L レギュラー(127円/L) 19,050 63,500 190,500
電気(テスラ) 230Wh/km
2kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 17,395 37,118 93,468
スマートライフ(17.46円/kWh) 24,793 52,904 133,220
スタンダード(30.02円/kWh) 42,628 90,961 229,053
電気(i3) 130Wh/km
1kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 9,249 20,396 52,246
スマートライフ(17.46円/kWh) 13,182 29,071 74,467
スタンダード(30.02円/kWh) 22,665 49,983 128,035

年間3,000km程度であれば、どんなクルマに乗っても、維持費に大した差はつきません。それでも電化上手を利用した場合のEVの走行費用はとても安いことがわかります。

我が家は年間1万kmあまりという感じなので、2列目に該当します。ここまでくると電化上手の恩恵は圧倒的で、大型EVで年間1万km乗っても月額3,000円くらい、超低燃費のハイブリッドカーの半額に迫ります。もう少し電気料金の高いスマートライフでも同クラスのガソリンの半分以下という印象になります。

走行コストが安いと、クルマに積極的に乗りたくなり、カーライフはより楽しくなります。すでにエコキュートなどで電化上手を使っている方は、これをEVに充電しないのはもったいない!

きめ細かい充電設定

「これ、電気自動車なんです」という話をすると、EVのことをまったく知らない人(女性が多い)は「どこで充電するんですか?」という質問が多いのですが、ちょっとはクルマや電子機器が好きな人(男性が多い)は、「バッテリーは劣化しないのですか?」と聞かれることが多いようです。なかなかするどいところですね。

リーフに乗っている方はセグ欠けという形でバッテリーの劣化を目の当たりにすることが多いようです。リーフの場合、数年乗っていると、12セグメントあったバッテリー容量の2セグメントくらい欠ける(つまり20%くらい容量が減る)のは標準的みたいです。メーカーはバッテリー容量の保障をうたっていますが、これは5年以内に8セグメント以下になった場合は、9セグメント以上になるよう修理対応してくれるというものですが、あまり安心感につながる保障とは言い難い気がします。

リーフにはバッテリーの温度管理システムがないのですが、特に急速充電中はバッテリーの温度が上昇し、これが劣化の大きな原因となるとも言われています。テスラやBMW i3はバッテリー専用の冷却加熱システムが搭載されており、バッテリーモジュールにクーラントが張り巡らされています。充電中の温度上昇は冷却され、逆に冬の寒冷地など低温でバッテリーの性能が出ない場面では加熱されます。

日常利用で温度の次に問題になるのは、バッテリーの過充電です。リチウムイオン電池の特性として、100%充電の状態で長い時間放置し、さらに継ぎ足し充電を繰り返すと、バッテリーが急速に劣化することが知られています。ノートPCやスマートフォンでも、常にAC接続して100%の状態を保つと、バッテリー容量が減ってしまうことを経験した人も多いのではないでしょうか。XperiaやVAIOなど、もともとソニー製品だったものはいたわり充電という機能があり、あえてバッテリーを100%にしないことで寿命を延ばすことができます。

テスラはこの点について非常によく考えられています。通常利用時に何%まで充電するかは、設定画面やモバイルアプリで1%単位で設定することができます。下の画面で言うと、充電率のバーの下に▲マークがあり、これを動かすことでリミットを設定できます。100%充電を繰り返していると、「日常利用では100%充電を多用しない方が良い」という趣旨の警告も出します。バッテリー容量も大きいので、通常は90%設定にしておくことが推奨されています。80%や70%にするとなお良いのかというと、そうでもなく、90%とほぼ効果としては同じ程度とされています。

テスラは充電限度だけでなく、充電を何時に開始して、何時に終わりにするかも設定しておくことができます。オール電化で深夜電力を契約している場合、もっとも電力料金が安い時間だけ充電することで、EVの走行コストはかなり安くなります。

テスラはこのようにきめ細かく充電設定ができることもあり、自宅に置いている間は(充電していない場合でも)充電器に接続しておくことが推奨されています。通常はバッテリーが消費される補助機器にも、接続中は充電器から電流が供給されるので、バッテリーの寿命にプラスの効果があります。

充電を100%にしないことには、もうひとつメリットがあります。充電直後でも回生ブレーキが有効だということです。EVは減速のエネルギーを回生させて充電することができますが、100%充電では回生できず、減速もしないので、ブレーキを踏む必要があります。例えば充電場所が高台にある場合、クルマを始動して下り坂をどんどん下りるという状況を考えると、100%充電は避けたいのです。

BMW i3は、充電限度の設定についてはテスラとはまったく違うポリシーで作られています。i3の基本設定は、充電器を接続すると、100%まで充電するようになっています。計画的に充電するためには、まず1週間の自動車の利用開始時刻を曜日ごとに設定します。例えば、これを毎日朝8時に設定しておけば、常に朝8時には100%充電になるように制御されます。さらに、充電の時間帯を設定することができるので、深夜電力の時間帯にセットしておく(i3ではオフピーク料金充電というメニューになっている)ことで電気代を節約できます。

まずi3の最大の問題は、常に100%充電しようとすることで、これを避けるには、適当なところでケーブルを抜くしかありません。バッテリー寿命には悪影響だし、家が高台にあっても、毎日、回生ブレーキが利かない状態での出発となるわけです。これは改善してほしいポイントです。

次に、オフピーク料金充電を設定しても、翌朝の出発時刻までに100%充電できないと判断すると、ただちに充電を開始してしまいます。33kWのi3の場合、AC充電は最大200V15A(約3kW)で、ほぼゼロに近い状態からだと、充電に12時間ほどかかります。半分くらい残っていても、「23時まで待ってから充電開始では朝までに100%行かないかもしれない」と判断するらしく、勝手に即充電に切り替えられてしまいます。この動作の意味がわからず、何度オフピーク料金充電に設定しても、勝手に戻ってしまうので、最初はかなり戸惑いました。充電限度を設定する機能はなく、充電電流は制限できるのですが、電流を制限すれば余計に充電時間が長くなり、オフピーク料金充電はほとんど機能しなくなります。

結局のところ、i3の充電を望ましい形で制御するには、ケーブルの抜き差ししかないという状況で、トホホ感が漂います。せめて電源回路にタイマーを仕込みたいな、と思っています。

完全無料の充電器

チャージングカードを使っていると、一定期間無料だったり、従量制の料金よりも定額の割合が大きかったりで、充電あたりの費用はそれほど意識しないのですが、完全に無料の充電器というのがあります。

GoGoEVでは、無料充電器だけを条件に絞り込むことができますが、意外なほどの多さに驚きます。無料でガソリンを入れてくれるガソリンスタンドはないのに、なぜEVの充電器は無料にできるのでしょうか。その背景を理解した上で、上手に利用すると、とてもお得感があります。

無料充電器には、いくつかタイプがあるようです。タイプに応じて実例を交えて紹介しましょう。

  1. 地方自治体の公共施設
    市役所や町役場、村役場などに急速充電器を設置している例はたくさんあるようです。例えば私が実際に利用したことがある甲府市役所の急速充電器。2017年6月現在、唯一の制限は充電容量80%ということだけで、1時間以内ならば駐車場代も無料。至れり尽くせりです。
    このような地方自治体の充電器は、再生可能エネルギーの利用促進などを目的として設置されていることが多く、充電にかかる費用はその自治体の予算で賄われているようです。通りすがりの旅行者の、それもEVを利用するごく一部に対して在住者の税金が使われることはどうか?という気もします。当初は無料だったけど、現在はNCSに加入して有償化しているという地方自治体も増えてきているようです。
  2. ショッピングモール
    駐車場内に無料の充電器を設置しているショッピングモールも数多くあります。全国にあるイオンモールは積極的な充電設備の設置をうたっていますが、料金システムは(1)基本的にNCSに加入、(2)NCSのチャージングカードがなくてもWAONで認証可能、というパターンが多いのですが、急速充電器は有償でも、普通充電器は無償というところも多く、急速充電器も無償というところもあります。EV所有者は一戸建てに住んで充電設備を設置している人が多いでしょうから、こうした施策は富裕層などを狙った来店促進策やイメージ向上策と言えるのかもしれません。駐車場としてもかなり良い場所を確保できる場合が多く、EV優遇を感じることができます。
    イオンモール印西の充電器は普通充電器も急速充電器も2017年6月現在完全に無料です。(1Fに設置されている3台は無料ですが、2Fのシネマ入口にある普通充電器はNCSです)
    完全無料である代わりに、インフォメーションセンターで申込用紙を書いて登録する必要があるのですが、充電器の制限は急速充電器15分、普通充電器60分だけですので、実際は登録しない状態でも問題なく使えます。ただ、急速充電器は15分で充電終了してしまうので、買い物をするにも相当あわただしいですね。
  3. 観光の促進目的
    EV利用者は決して多くないので、充電器で本当に観光が促進されるのか、投資に見合う効果があるのかは怪しいわけですが、今よりEVの普及が進んだ未来を見据えて投資している地域もあるようです。多くは道の駅や観光センター、観光施設などに設置されています。
    例えば道の駅親不知ピアパーク(糸魚川市)では、営業時間中ならば無料で急速充電ができます。充電するには店員に申告する必要がありますが、申告しなくても充電できるところも多く、営業時間外でもケーブルさえ届けば充電できる場合もあります。とりっくあーとぴあ日光のように、24時間誰でも完全無料で充電できると公式にうたっている施設もあります。もちろん利用者としてはとても助かるのですが、EVが比較的少ない今だからまだ成り立っているのかもしれません。
  4. メーカー協賛
    テスラ限定だと思うのですが、テスラにはデスティネーションチャージャーという普通充電器があります。一般の家庭用のウォールコネクターと同等のものを宿泊施設や観光施設などに設置する場合、設置費用をテスラが負担してくれるというようなプログラムで、テスラ利用者なら宿泊すると翌朝は充電100%ですから、圧倒的利便性です。
    テスラ限定で宿泊施設にどれだけ本当のメリットがあるのかは難しいところかもしれませんが、テスラ利用者にとっては宿泊先を選ぶ大きな要因になりますね。

無料の利用者が殺到して混雑してしまうと、かえって利便性を損なうので、申し込み、登録、充電時間、充電限度などで制限がかけられていることが多いのですが、完全無料で充電できるメリットは大いにあります。上手に利用してEVライフを向上させていきたいですね。

充電できない!

テスラをCHAdeMOの急速充電器で充電する場合には、CHAdeMOアダプターを使って接続します。このアダプターは国内でテスラのクルマを購入すると標準で付属してきます。

世界で使われている電気自動車用の高速充電器はCHAdeMO方式、コンボ(CCS)方式、テスラ方式、中国方式があるようですが、DC(直流)で電流・電圧を適切に調整しながら充電するという意味では同様の機能を提供しているわけで、テスラのアダプターのように、アダプターで対応できる気がするのですが、実際にアダプターが存在するのは、このCHAdeMO→テスラだけのようです。いろいろ事情があるのでしょうね。

しかし、このアダプターで完璧かというと、そうも行かないようです。最近、いくつか充電できないケースがあり、どうやらテスラ本体のソフトウェア更新も関係しているようです。

写真は三菱自動車に設置されていたJFEの充電器ですが、真ん中にわざわざテスラ向けの注意書きまであるのに、絶縁試験に失敗しましたと表示され、充電できませんでした。以前は充電できた、またはテスラでも車種によって充電できるということなのかもしれません。

こちらは別の充電器ですが、やはり同じように接続を確認する部分でエラーになっているようです。「早く充電しなければ!」と、ようやくたどり着いた充電器で、このように充電できないとショックです・・・。

EVsmartなどの口コミをよく確認して充電計画を立てること、充電器のメーカー名や機種なども把握することなどが重要みたいです。

電気自動車に必要なバッテリー容量

電気自動車の選択について回るのが、バッテリー容量です。ガソリン車やディーゼル車では、航続距離は燃費とタンク容量で決まるわけですが、空にさえしなければガソリンスタンドですぐ満タンですから、そこまでは気にしませんね。

我が家のBMW i3の場合、33kWhの電池を搭載し、JC08モードで航続距離390kmとされています。1kmあたりの電費は約85Wh/kmということになりますが、正直なところ、現実的な電費とは2倍近く違います。モデルチェンジ前のi3は21.8kWhで229kmということだったので、電費も95Wh/kmから85kWh/kmに10%くらい向上したようですが、何が寄与しているのかは、正直よくわかりません。

i3の主な用途は日常利用なので、どんなに多くても1日に100km走ることはなく、そういう意味では旧モデルでも問題はなかったかもしれません。でも、電池容量が大きいと充電時間も短くなるし、寿命も電池容量に(ほぼ)比例して伸びるので、電池容量が大きいに越したことはない。

蓄電池は充放電を繰り返すと劣化しますが、この劣化の指標となるのがサイクル時間です。我が家のi3の実電費は130Wh/kmほどですが、仮にこれで1万km走ると、累積で1300kWh使うわけで、これは電池容量33kWhの39.4倍です。電池屋さんは、これを39.4Cと表現します。我が家のi3の場合、1万km走ったら39.4C、5万kmなら197Cということになります。

リチウムイオン電池の標準的な性能では、500Cで容量60%と言われます。仮にその通りだとすれば、1万kmの39.4Cでは、0.6^(39.4/500)=0.961で、1万kmでは3.9%の電池劣化になるわけですが、21.8kWhの旧バッテリー仕様だとすると、59.6Cで0.6^(59.6/500)=0.941なので、電池劣化は5.9%も進むことになるのです。もともと容量が少ない上に、早く劣化してしまうわけで、電池容量がいかに大事かがわかります。

我が家のテスラの方は60kWhですが、実際に搭載されているのは75kWh、実電費230Wh/kmで計算して、劣化率一覧表を作ってみました。

モデル(電費) 電池容量 1万km 5万km 10万km 25万km
BMW i3 (130Wh/km) 21.8kWh 5.9% 26.3% 45.6% 78.2%
 33.2kWh 3.9% 18.1% 33.0% 63.2%
テスラ モデルX 60D (230Wh/km) 75kWh 3.1% 14.5% 26.9% 54.3%
テスラ モデルX 100D (230Wh/km) 100kWh 2.3% 11.1% 20.9% 44.4%

寿命を考えると、容量は大きければ大きいほど良いわけですが、その一方で、充電インフラを考えると、あまり大きくても意味がない面もあります。

我が家の充電器は200V16Aなので、深夜電力の23時~7時までの8時間で充電できるのは25kWhくらいです。BMW i3の場合は、ほぼ空っぽでも翌朝には満タンということになるわけですが、テスラの場合は1日では満タンになりません。テスラ本体は交流200Vでも標準で48A、アップグレードすると72Aまで流せるし、ウォールコネクターは80A容量なので、太いケーブルがついているのですが、通常の宅内配線では、ピークで20Aまでなのです。

また、CHAdeMOの急速充電器は出力の大きいもので400V125Aで、最大30分で制限されているものが大半です。理論的限界値でも、1回の充電で25kWhしか充電できないわけです。CHAdeMOにはもっと電流値の低い充電器も多数あって、30分で充電できるのは10kWhなんていうこともあるので、電池容量を生かせないことも多い状況です。

現在標準的な電気自動車の充電環境を考えると、だいたい30~40kWh程度の電池容量にとって快適な設計がされているので、テスラModel Xの60kWhもBMW i3の33kWhも、不足や不便は感じません。スーパーチャージャーが近くにあったり、CHAdeMOの容量が大きく上がったりすると、また違うのかもしれません。

 

CHAdeMOの急速充電

EVユーザーなら当たり前のことかもしれませんが、急速充電のやり方を書いてみます。

CHAdeMOは主に日本の自動車メーカーが主体となって策定した世界標準の電気自動車充電方式。世界中で同じ自動車と充電器が使えるというコンセプトで、国内ではデファクトスタンダードです。しかし、世界を見渡すと他の標準もあるのでデファクトスタンダードにはなっていないようです。

見た目も大きく電流電圧も大きいわけですが、スマートフォンのUSB充電と大きく違うわけではありません。充電器と自動車を接続すると、相互に通信して最適な電流電圧で充電するという流れになります。完全に無料の充電器もありますが、通常は費用がかかる話なので、認証や決済が必要になります。

テスラの場合はテスラチャージングカードが6か月間無料、BMWの場合はChargeNowカードが12か月間無料で使え、それぞれ無料期間は従量制料金も無料なので、充電し放題です。無料期間が終わると、テスラの場合は月額3,250円(税別)、BMWは月額5,000円(税別)となり、急速充電は1分15円(税別)の従量制料金もかかります。

充電の手順は以下のようになります。

  1. 充電器の画面を操作して充電できることを確認する
  2. コネクターを自動車に挿す
  3. 充電カードをかざして認証する
  4. 充電開始する
  5. 充電が終わると登録メールアドレスに通知が来る(コネクターを抜いて途中でやめることもできる)
  6. コネクターを外し、充電器の画面で終了を確認する

充電器によっては、2と3の順番が逆の場合もあるようですが、基本的には充電器についている画面の指示に従えば良いので、難しくはありません。

充電カードがない場合、ゲストカード(充電器と一緒に置かれている場合が多い)を使って、クレジットカードとスマートフォンがあれば即時決済で充電できる場合も多いようです。NCSの場合、1分あたり50円(税別)です。125Aの充電器だとギリギリありかも、という気はしますが、50Aの充電器もある中で、1分50円はかなり高い。1kWhあたり60-200円くらいの計算なので、Model Xでは1km走行費用が15-50円くらいに相当します。

そもそもNCSの認証は車両と充電カードが紐づけられているので、本当に充電カードは必要なのか、という疑問があります。充電した電力も完全に把握しているのに、異なる能力の充電器に対して一律1分15円という値付けも疑問です。ここをもっとフェアなしくみにして行かないと、性能の高い充電器が普及しないし、EVライフの質は上がらないですね。