急速充電器のユーザー体験

Webサイトやスマートフォンのアプリなどの設計では、よく「UIよりUX (User eXperience = ユーザー体験)」などと言われることが多いようです。画面の見た目よりも、利用目的に応じて必要な行動全体を見渡して、表示方法や操作方法をデザインしましょう、というような意味です。

そうした観点で考えると、どうも急速充電器、特にCHAdeMOのUXは決して良くないのです。何が快適じゃないと感じるのか、考えてみました。

  1. 時間が読めない
    一番困ると感じるのはこれです。急速充電器の場所はナビやEVsmartのアプリなどで探すことができますが、いつ充電終了するのか、時間が読めない。誰か他の人が充電中かもしれず、他にも待っている人がいるかもしれないので、いつ充電開始できるかは行ってみないとわからない。しかも待った挙句、充電中のEVの持ち主が現れないこともあります。
  2. 結果も読めない
    充電開始できたとしても、多くのCHAdeMO充電器は30分の時間制限となっているため、20kWの充電器で最大10kWh、50kWの充電器でも最大25kWhしか充電できない。しかも実際に充電できる電力量はバッテリーの構成や車両側と充電器のソフトウェアのアルゴリズムによって少しずつ違い、30分後の状態が正確にわからない。30分後に継続して充電(おかわり)できるかどうかも、次の人が来るかどうかに左右されるので、わからない。
  3. 操作が煩雑な上に統一されていない
    CHAdeMOの場合、認証カードが必要。自動車メーカーから提供されていたり、月額費用を支払って加入している場合は、持っているはずですが、そうではない場合にはゲストカードが必要だったり、さらに電話でカード払いの手続きをする必要があったりします。充電器本体で認証カードを操作するものもあれば、認証カードは別の装置を使う場合もあります。認証操作をしなければ充電コネクターが外れない充電器もあれば、充電コネクターをEVに差し込んでから認証する場合もあります。認証カードはEV車両に紐づけられていて、別のEVに使いまわすことはできないのに、なぜ認証カードで操作しなければいけないのか理解に苦しみます。

テスラのスーパーチャージャーは、CHAdeMOよりは遥かに洗練されたUXになっています。

バレーパーキングの六本木を除いて、スーパーチャージャーは最低でも4基設置されているので、充電待ちが発生しているのを見たことはありません。(日本よりも台数がけた違いに多い米国では、待ちが発生して問題になっているようです)

充電を開始すれば、バッテリー容量の大きいEV(テスラの現行モデルでは最大100kWh)でも、30分~1時間程度で充電は終了するので、よほど時間優先の状態でもなければ、常に結果は100%充電です。

操作はほぼ何もなく、充電器のコネクターを車両に差し込むだけです。充電器は自動的に車両を認証します。充電費用は車両の契約によって違いますが、有料の場合でも充電量に応じて、あらかじめテスラに登録しているクレジットカードで自動的に決済されます。

それにしても、CHAdeMOの30分という区切りは、なかなか中途半端で扱いにくいです。10~15分くらいで終わればトイレ休憩で良いのですが、食事や買い物の合間に充電したいニーズだと、逆に30分で車両を移動しなければいけないのが非常に不便です。ショッピングモールなどでは、駐車場とショップやレストランが離れていて、しかも車両を移動する先を探すのにひと苦労ということも多く、30分で3割くらい充電できたけど車両を移動しないと!というような状況が発生しやすく、これはストレスフルです。

一律で50kW 30分などという形ではなく、利用者のニーズにあわせて出力や充電時間にある程度の幅があり、それも複数の充電器でシェアしたり、順番に切り替えたりするようなしくみがあると理想に近づくのかな、と思ったりします。

そのためには、1か所に複数の充電器が設置されることや、それ以上の台数分の駐車スペースが必要になるわけで、その前提は、やっぱりEVがもっと普及することなのでしょうね。

電気自動車とガソリン車の経済性

電気自動車の走行コストは安いのか?というのも、よく聞かれる質問です。いろいろな条件が違うので、一概に比較するのは難しいのですが、真剣に比較してみましょう。

比較が難しい理由のひとつは、ガソリン車側の問題。ガソリンの価格が変動するし、地域差があるし、乗り方によって実質燃費が大きく違います。そしてもうひとつは電気自動車側の問題。充電方法によって電気代が大きく違い、乗らなくても電気を消費します。電力自由化で電気料金はより複雑になり、電力会社によって電気代も違えば、ソーラーパネルを設置して自前で充電することすらできるのですから、比較は本当に複雑です。

ここはひとつ、話を単純化するため、前提を設けることにします。

  1. 電気自動車本体を購入する経済性については、議論から除外する。
    EVはバッテリー劣化によってリセールバリューが低いとか、その反面、補助金が出るとか、選択肢が少ないとか、いろいろ意見はあると思いますが、ひとまずその議論は除外して考えます。
  2. 燃料費以外の維持費の差額は含めない。
    ガソリン車はエンジンオイル交換の費用がかかったり、ガソリンの水抜き剤があったり、ブレーキパッドが減ったり、ミッションオイルも必要だったりしますが、EVは回生ブレーキがメインなのでブレーキパッドは減らないし、ミッションはないし、エンジンオイルもありません。でもそれなりに自動車を使う前提で考えれば、これらの費用はそれほど大きい割合にはならないので、ひとまず置いておきましょう。
  3. 電気代は東京電力
    ひとまず新電力は考えず、地域によっても電気代は違いますが、自分の場合を中心に東京電力の電気料金をベースに考えます。関東地方の場合、新電力で競争力のある深夜電力を提供している会社はないので、EVは東京電力がベストです。
    我が家はオール電化の電化上手ですが、実はこれ今年の4月に廃止されて、新規契約ができなくなっています。代わりになるのはスマートライフなのですが、深夜電力だけで見ると大きく値上がりしている上に、深夜電力の適用時間が短縮されているので、EVにとっては相当な痛手です。そこで電気代は、電化上手、スマートライフ、スタンダードの3種類で比較してみます。

年間走行距離が3,000kmの場合(都内を想定)、1万kmの場合(都市部郊外を想定)、3万kmの場合(通勤などにも使う地方を想定)で、年間の燃料費を表にしてみました。ガソリン車は走った分だけのガソリン消費(ガソリン価格はgogo.gsの全国平均価格)ですが、EVは乗らなくても電力を消費します。テスラの場合、メーカーの主張は1日の自己放電が1%以下とされていますが、放電以外にも消費していることもあり、経験的にはもっと減るので、1日あたり2kWhとして計算しました。i3はその半分程度です。

燃費 料金体系 年間3000km 年間1万km 年間3万km
ガソリン 高級車 10km/L ハイオク(138円/L) 41,400 138,000 414,000
 エコカー 20km/L レギュラー(127円/L) 19,050 63,500 190,500
電気(テスラ) 230Wh/km
2kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 17,395 37,118 93,468
スマートライフ(17.46円/kWh) 24,793 52,904 133,220
スタンダード(30.02円/kWh) 42,628 90,961 229,053
電気(i3) 130Wh/km
1kWh/日
電化上手(12.25円/kWh) 9,249 20,396 52,246
スマートライフ(17.46円/kWh) 13,182 29,071 74,467
スタンダード(30.02円/kWh) 22,665 49,983 128,035

年間3,000km程度であれば、どんなクルマに乗っても、維持費に大した差はつきません。それでも電化上手を利用した場合のEVの走行費用はとても安いことがわかります。

我が家は年間1万kmあまりという感じなので、2列目に該当します。ここまでくると電化上手の恩恵は圧倒的で、大型EVで年間1万km乗っても月額3,000円くらい、超低燃費のハイブリッドカーの半額に迫ります。もう少し電気料金の高いスマートライフでも同クラスのガソリンの半分以下という印象になります。

走行コストが安いと、クルマに積極的に乗りたくなり、カーライフはより楽しくなります。すでにエコキュートなどで電化上手を使っている方は、これをEVに充電しないのはもったいない!

きめ細かい充電設定

「これ、電気自動車なんです」という話をすると、EVのことをまったく知らない人(女性が多い)は「どこで充電するんですか?」という質問が多いのですが、ちょっとはクルマや電子機器が好きな人(男性が多い)は、「バッテリーは劣化しないのですか?」と聞かれることが多いようです。なかなかするどいところですね。

リーフに乗っている方はセグ欠けという形でバッテリーの劣化を目の当たりにすることが多いようです。リーフの場合、数年乗っていると、12セグメントあったバッテリー容量の2セグメントくらい欠ける(つまり20%くらい容量が減る)のは標準的みたいです。メーカーはバッテリー容量の保障をうたっていますが、これは5年以内に8セグメント以下になった場合は、9セグメント以上になるよう修理対応してくれるというものですが、あまり安心感につながる保障とは言い難い気がします。

リーフにはバッテリーの温度管理システムがないのですが、特に急速充電中はバッテリーの温度が上昇し、これが劣化の大きな原因となるとも言われています。テスラやBMW i3はバッテリー専用の冷却加熱システムが搭載されており、バッテリーモジュールにクーラントが張り巡らされています。充電中の温度上昇は冷却され、逆に冬の寒冷地など低温でバッテリーの性能が出ない場面では加熱されます。

日常利用で温度の次に問題になるのは、バッテリーの過充電です。リチウムイオン電池の特性として、100%充電の状態で長い時間放置し、さらに継ぎ足し充電を繰り返すと、バッテリーが急速に劣化することが知られています。ノートPCやスマートフォンでも、常にAC接続して100%の状態を保つと、バッテリー容量が減ってしまうことを経験した人も多いのではないでしょうか。XperiaやVAIOなど、もともとソニー製品だったものはいたわり充電という機能があり、あえてバッテリーを100%にしないことで寿命を延ばすことができます。

テスラはこの点について非常によく考えられています。通常利用時に何%まで充電するかは、設定画面やモバイルアプリで1%単位で設定することができます。下の画面で言うと、充電率のバーの下に▲マークがあり、これを動かすことでリミットを設定できます。100%充電を繰り返していると、「日常利用では100%充電を多用しない方が良い」という趣旨の警告も出します。バッテリー容量も大きいので、通常は90%設定にしておくことが推奨されています。80%や70%にするとなお良いのかというと、そうでもなく、90%とほぼ効果としては同じ程度とされています。

テスラは充電限度だけでなく、充電を何時に開始して、何時に終わりにするかも設定しておくことができます。オール電化で深夜電力を契約している場合、もっとも電力料金が安い時間だけ充電することで、EVの走行コストはかなり安くなります。

テスラはこのようにきめ細かく充電設定ができることもあり、自宅に置いている間は(充電していない場合でも)充電器に接続しておくことが推奨されています。通常はバッテリーが消費される補助機器にも、接続中は充電器から電流が供給されるので、バッテリーの寿命にプラスの効果があります。

充電を100%にしないことには、もうひとつメリットがあります。充電直後でも回生ブレーキが有効だということです。EVは減速のエネルギーを回生させて充電することができますが、100%充電では回生できず、減速もしないので、ブレーキを踏む必要があります。例えば充電場所が高台にある場合、クルマを始動して下り坂をどんどん下りるという状況を考えると、100%充電は避けたいのです。

BMW i3は、充電限度の設定についてはテスラとはまったく違うポリシーで作られています。i3の基本設定は、充電器を接続すると、100%まで充電するようになっています。計画的に充電するためには、まず1週間の自動車の利用開始時刻を曜日ごとに設定します。例えば、これを毎日朝8時に設定しておけば、常に朝8時には100%充電になるように制御されます。さらに、充電の時間帯を設定することができるので、深夜電力の時間帯にセットしておく(i3ではオフピーク料金充電というメニューになっている)ことで電気代を節約できます。

まずi3の最大の問題は、常に100%充電しようとすることで、これを避けるには、適当なところでケーブルを抜くしかありません。バッテリー寿命には悪影響だし、家が高台にあっても、毎日、回生ブレーキが利かない状態での出発となるわけです。これは改善してほしいポイントです。

次に、オフピーク料金充電を設定しても、翌朝の出発時刻までに100%充電できないと判断すると、ただちに充電を開始してしまいます。33kWのi3の場合、AC充電は最大200V15A(約3kW)で、ほぼゼロに近い状態からだと、充電に12時間ほどかかります。半分くらい残っていても、「23時まで待ってから充電開始では朝までに100%行かないかもしれない」と判断するらしく、勝手に即充電に切り替えられてしまいます。この動作の意味がわからず、何度オフピーク料金充電に設定しても、勝手に戻ってしまうので、最初はかなり戸惑いました。充電限度を設定する機能はなく、充電電流は制限できるのですが、電流を制限すれば余計に充電時間が長くなり、オフピーク料金充電はほとんど機能しなくなります。

結局のところ、i3の充電を望ましい形で制御するには、ケーブルの抜き差ししかないという状況で、トホホ感が漂います。せめて電源回路にタイマーを仕込みたいな、と思っています。

完全無料の充電器

チャージングカードを使っていると、一定期間無料だったり、従量制の料金よりも定額の割合が大きかったりで、充電あたりの費用はそれほど意識しないのですが、完全に無料の充電器というのがあります。

GoGoEVでは、無料充電器だけを条件に絞り込むことができますが、意外なほどの多さに驚きます。無料でガソリンを入れてくれるガソリンスタンドはないのに、なぜEVの充電器は無料にできるのでしょうか。その背景を理解した上で、上手に利用すると、とてもお得感があります。

無料充電器には、いくつかタイプがあるようです。タイプに応じて実例を交えて紹介しましょう。

  1. 地方自治体の公共施設
    市役所や町役場、村役場などに急速充電器を設置している例はたくさんあるようです。例えば私が実際に利用したことがある甲府市役所の急速充電器。2017年6月現在、唯一の制限は充電容量80%ということだけで、1時間以内ならば駐車場代も無料。至れり尽くせりです。
    このような地方自治体の充電器は、再生可能エネルギーの利用促進などを目的として設置されていることが多く、充電にかかる費用はその自治体の予算で賄われているようです。通りすがりの旅行者の、それもEVを利用するごく一部に対して在住者の税金が使われることはどうか?という気もします。当初は無料だったけど、現在はNCSに加入して有償化しているという地方自治体も増えてきているようです。
  2. ショッピングモール
    駐車場内に無料の充電器を設置しているショッピングモールも数多くあります。全国にあるイオンモールは積極的な充電設備の設置をうたっていますが、料金システムは(1)基本的にNCSに加入、(2)NCSのチャージングカードがなくてもWAONで認証可能、というパターンが多いのですが、急速充電器は有償でも、普通充電器は無償というところも多く、急速充電器も無償というところもあります。EV所有者は一戸建てに住んで充電設備を設置している人が多いでしょうから、こうした施策は富裕層などを狙った来店促進策やイメージ向上策と言えるのかもしれません。駐車場としてもかなり良い場所を確保できる場合が多く、EV優遇を感じることができます。
    イオンモール印西の充電器は普通充電器も急速充電器も2017年6月現在完全に無料です。(1Fに設置されている3台は無料ですが、2Fのシネマ入口にある普通充電器はNCSです)
    完全無料である代わりに、インフォメーションセンターで申込用紙を書いて登録する必要があるのですが、充電器の制限は急速充電器15分、普通充電器60分だけですので、実際は登録しない状態でも問題なく使えます。ただ、急速充電器は15分で充電終了してしまうので、買い物をするにも相当あわただしいですね。
  3. 観光の促進目的
    EV利用者は決して多くないので、充電器で本当に観光が促進されるのか、投資に見合う効果があるのかは怪しいわけですが、今よりEVの普及が進んだ未来を見据えて投資している地域もあるようです。多くは道の駅や観光センター、観光施設などに設置されています。
    例えば道の駅親不知ピアパーク(糸魚川市)では、営業時間中ならば無料で急速充電ができます。充電するには店員に申告する必要がありますが、申告しなくても充電できるところも多く、営業時間外でもケーブルさえ届けば充電できる場合もあります。とりっくあーとぴあ日光のように、24時間誰でも完全無料で充電できると公式にうたっている施設もあります。もちろん利用者としてはとても助かるのですが、EVが比較的少ない今だからまだ成り立っているのかもしれません。
  4. メーカー協賛
    テスラ限定だと思うのですが、テスラにはデスティネーションチャージャーという普通充電器があります。一般の家庭用のウォールコネクターと同等のものを宿泊施設や観光施設などに設置する場合、設置費用をテスラが負担してくれるというようなプログラムで、テスラ利用者なら宿泊すると翌朝は充電100%ですから、圧倒的利便性です。
    テスラ限定で宿泊施設にどれだけ本当のメリットがあるのかは難しいところかもしれませんが、テスラ利用者にとっては宿泊先を選ぶ大きな要因になりますね。

無料の利用者が殺到して混雑してしまうと、かえって利便性を損なうので、申し込み、登録、充電時間、充電限度などで制限がかけられていることが多いのですが、完全無料で充電できるメリットは大いにあります。上手に利用してEVライフを向上させていきたいですね。

レンジエクステンダー

BMW i3は、レンジエクステンダー装備モデルがありますが、我が家のi3は純粋なEVです。レンジエクステンダーのないモデルを選択しています。

この地域(千葉県)の営業担当者によれば、レンジエクステンダー付を選択する人の方が多数派のようです。EVというと、航続距離が気になる人が多いと思います。他社にあまりない選択肢としてレンジエクステンダーがあるのが、i3の魅力のひとつだという話には説得力がありますね。

なぜレンジエクステンダー付ではないのか?我が家では迷うことなくREXなしを選択しています。

最大の問題は、車両重量がREX付は1420kg、REXなしは1300kgで、約10%の違い。これをどう考えるか。常に10%の重りを乗せている、または常に大人2名が余計に乗車している状態になっている、と考えると、燃費(電費)や走りにも確実に悪影響があります。

もうひとつは、機械である以上、使わないと劣化するということ。REX付を選んだら、せめて数か月に1回くらいは燃料タンクを空にするくらいREXを使ってあげる必要がある、いや、そうするべきだと思います。ガソリンも入れっぱなしでは劣化してしまうし、いつも劣化したガソリンばかりでエンジンを回すのも、とてもエンジンに良いとは思えません。

我が家では遠出するときはテスラModel Xなので、BMW i3は日常の足であり、1日に100km走ることは、まずありません。そう考えると現在のi3で満充電なら実質的に200km程度は走行でき、真冬(未経験)に暖房全開でも、おそらく150kmは走れる。REXが必要なシーンはまずないし、本当にそのような状況ならCHAdeMOで急速充電しても良いわけです。

最大で9Lのガソリンタンクで、ガソリンスタンドに行って給油?そうしてREXをメンテナンスしていくのは、考えることがひとつ増えるだけで、ほとんどメリットがない気がします。

分類上はレンジエクステンダー(REX)のないモデルは電気自動車(EV)、REXのあるモデルはプラグインハイブリッド車(PHEV)ということになるようですが、i3の構造上は電気自動車にガソリン発電機がついているかどうかというだけの違いになります。PHEVといっても、現行(新型)プリウスPHVの8.8kWh、アウトランダーPHEVの10.2kWhと比較して、i3は33.2kWhと圧倒的な量の電池を搭載している一方で、発電用のエンジンは647ccと軽自動車以下、タンク容量も9Lですから、優先度の違いは明らかです。

PHEVとしての、REX付i3の燃費は24.7km/Lとされています。でも、REXで航続距離が延びるのは、カタログデータで121kmです。タンク容量9Lで割ると、リッター13.4km、せっかく直接のCO2排出がないEVに乗っているのに、こんなに効率が悪いエンジンで走るのは残念ですね。

もちろん、自動車の利用のしかた次第なので、REXがあることが魅力になるという人はいると思います。REX付でもまだ1420kgで同クラスの普通のクルマと変わらないともいえるのはi3の強みです。1.4tの重量で500km超走れるEVは他にないですから。

ナビが使えない!

テスラのセンターコンソールを見た人は一様に驚きの声を上げます。17インチのモニターが縦型に据え付けられているのは、とてもインパクトがあります。

この画面、リアカメラや音楽再生、カレンダーなどの機能に切り替えることができ、2分割で半々に表示したりもできるのですが、なんと言ってもやはりメインのアプリケーションはナビです。良い意味でも悪い意味でも普通のクルマとは大いに違うのです。

テスラのナビは基本的にGoogle Mapのカスタム版になっています。Google Mapで見慣れた画面にテスラのロゴが重ねて表示されています。現在のモデルXには標準でLTEの通信モジュールが搭載されており、地図には常にGoogle Mapの最新データが表示されており、ほとんどの操作は巨大なiPadを操作するように、タッチやスワイプ、ピンチで直感的に使うことができます。

ナビの目的地設定は、通常はハンドルについている音声認識ボタンを押して音声で指示をします。最近のグーグル検索と同じように、目的地は正確に表現する必要がなく、少しくらい間違ったことを言っても、たいてい正しい目的地(または目的地候補リスト)を示してくれます。また、電話番号や住所を音声で言っても、目的地設定できます。手書き入力などの機能もありますが、冗談かと思うほど使いにくいので、ほぼ音声だけです。

写真でもわかる通り、渋滞情報はGoogle Mapと同じINRIX社の情報が使われています。利用者のスマートフォンなどの位置情報を集計して作る渋滞情報の精度はとても高い。国産カーナビが使っているVICSとは比較にならないほど情報量が多く、時間応答が良く、非常に正確です。もはや、莫大な設備投資をして情報を作っているのに幹線道路しか情報がなく、更新が遅く、しかもわざわざ自動車側にも複数のビーコンを装備する必要があるVICSなどやめて、もっと他のことに投資してもらいたいと思うのですが…。

地図としての基本機能は国産カーナビと比較にならないほど優れ、画面も大きく操作性も良く、ほとんど音声で処理できるのは、まさに未来のクルマという印象なのですが、一転してカーナビとしての機能は実は微妙です。

何より困るのは、山間部に行くとナビが使えない。海外製と思われるLTEモジュールはドコモ回線を利用していますが、おそらくFOMAプラスエリアなどの周波数に対応していないので、山間部で通信不能になります。あらかじめわかっていれば、その地域の地図をダウンロードしておいたり、目的地をセットしておくこともできるのですが、通信不能の地域に入ってしまうと、とにかく何もできません。いきなりナビがまったくない状態になってしまう。昔はそれが普通だった気がしますが、今の時代にナビなしは、ちょっと心細いことになります。

また、ナビとしての機能は、とにかく距離を最適化する傾向があり、(これはBMW i3のナビも同様なんですが)とても通れない道を選ぶことがしばしばあります。到達時刻は渋滞情報が加味されず、都心では現実より相当早く、山間部では現実より遅く計算されます。国産カーナビのように、難しい立体交差や首都高ランプを拡大表示したり、音声できめ細かく案内するような機能はありません。地図はGoogle Mapなのに、ナビ機能はGoogleのものではなく、カーナビとしては、スマートフォンのナビアプリや、Google Mapのナビ機能を使った方が、はるかに良いようです。実際、スマートフォンを併用するようになりました。

メイン画面のGoogle Mapでは、実際に案内中にどこを曲がるのか、わかりにくいのですが、インパネの左3分の1には拡大した現在地が表示されます。これは非常にわかりやすい。(写真はスーパーチャージャーで充電中のものなので、真ん中が速度計ではなく、充電情報になっています)

通信モジュールは将来的にハードウェア交換などができるといいな、と思います。ナビの方は、きっとソフトウェアアップデートで改善されることを期待しつつ…。

充電できない!

テスラをCHAdeMOの急速充電器で充電する場合には、CHAdeMOアダプターを使って接続します。このアダプターは国内でテスラのクルマを購入すると標準で付属してきます。

世界で使われている電気自動車用の高速充電器はCHAdeMO方式、コンボ(CCS)方式、テスラ方式、中国方式があるようですが、DC(直流)で電流・電圧を適切に調整しながら充電するという意味では同様の機能を提供しているわけで、テスラのアダプターのように、アダプターで対応できる気がするのですが、実際にアダプターが存在するのは、このCHAdeMO→テスラだけのようです。いろいろ事情があるのでしょうね。

しかし、このアダプターで完璧かというと、そうも行かないようです。最近、いくつか充電できないケースがあり、どうやらテスラ本体のソフトウェア更新も関係しているようです。

写真は三菱自動車に設置されていたJFEの充電器ですが、真ん中にわざわざテスラ向けの注意書きまであるのに、絶縁試験に失敗しましたと表示され、充電できませんでした。以前は充電できた、またはテスラでも車種によって充電できるということなのかもしれません。

こちらは別の充電器ですが、やはり同じように接続を確認する部分でエラーになっているようです。「早く充電しなければ!」と、ようやくたどり着いた充電器で、このように充電できないとショックです・・・。

EVsmartなどの口コミをよく確認して充電計画を立てること、充電器のメーカー名や機種なども把握することなどが重要みたいです。

電気自動車に必要なバッテリー容量

電気自動車の選択について回るのが、バッテリー容量です。ガソリン車やディーゼル車では、航続距離は燃費とタンク容量で決まるわけですが、空にさえしなければガソリンスタンドですぐ満タンですから、そこまでは気にしませんね。

我が家のBMW i3の場合、33kWhの電池を搭載し、JC08モードで航続距離390kmとされています。1kmあたりの電費は約85Wh/kmということになりますが、正直なところ、現実的な電費とは2倍近く違います。モデルチェンジ前のi3は21.8kWhで229kmということだったので、電費も95Wh/kmから85kWh/kmに10%くらい向上したようですが、何が寄与しているのかは、正直よくわかりません。

i3の主な用途は日常利用なので、どんなに多くても1日に100km走ることはなく、そういう意味では旧モデルでも問題はなかったかもしれません。でも、電池容量が大きいと充電時間も短くなるし、寿命も電池容量に(ほぼ)比例して伸びるので、電池容量が大きいに越したことはない。

蓄電池は充放電を繰り返すと劣化しますが、この劣化の指標となるのがサイクル時間です。我が家のi3の実電費は130Wh/kmほどですが、仮にこれで1万km走ると、累積で1300kWh使うわけで、これは電池容量33kWhの39.4倍です。電池屋さんは、これを39.4Cと表現します。我が家のi3の場合、1万km走ったら39.4C、5万kmなら197Cということになります。

リチウムイオン電池の標準的な性能では、500Cで容量60%と言われます。仮にその通りだとすれば、1万kmの39.4Cでは、0.6^(39.4/500)=0.961で、1万kmでは3.9%の電池劣化になるわけですが、21.8kWhの旧バッテリー仕様だとすると、59.6Cで0.6^(59.6/500)=0.941なので、電池劣化は5.9%も進むことになるのです。もともと容量が少ない上に、早く劣化してしまうわけで、電池容量がいかに大事かがわかります。

我が家のテスラの方は60kWhですが、実際に搭載されているのは75kWh、実電費230Wh/kmで計算して、劣化率一覧表を作ってみました。

モデル(電費) 電池容量 1万km 5万km 10万km 25万km
BMW i3 (130Wh/km) 21.8kWh 5.9% 26.3% 45.6% 78.2%
 33.2kWh 3.9% 18.1% 33.0% 63.2%
テスラ モデルX 60D (230Wh/km) 75kWh 3.1% 14.5% 26.9% 54.3%
テスラ モデルX 100D (230Wh/km) 100kWh 2.3% 11.1% 20.9% 44.4%

寿命を考えると、容量は大きければ大きいほど良いわけですが、その一方で、充電インフラを考えると、あまり大きくても意味がない面もあります。

我が家の充電器は200V16Aなので、深夜電力の23時~7時までの8時間で充電できるのは25kWhくらいです。BMW i3の場合は、ほぼ空っぽでも翌朝には満タンということになるわけですが、テスラの場合は1日では満タンになりません。テスラ本体は交流200Vでも標準で48A、アップグレードすると72Aまで流せるし、ウォールコネクターは80A容量なので、太いケーブルがついているのですが、通常の宅内配線では、ピークで20Aまでなのです。

また、CHAdeMOの急速充電器は出力の大きいもので400V125Aで、最大30分で制限されているものが大半です。理論的限界値でも、1回の充電で25kWhしか充電できないわけです。CHAdeMOにはもっと電流値の低い充電器も多数あって、30分で充電できるのは10kWhなんていうこともあるので、電池容量を生かせないことも多い状況です。

現在標準的な電気自動車の充電環境を考えると、だいたい30~40kWh程度の電池容量にとって快適な設計がされているので、テスラModel Xの60kWhもBMW i3の33kWhも、不足や不便は感じません。スーパーチャージャーが近くにあったり、CHAdeMOの容量が大きく上がったりすると、また違うのかもしれません。

 

テスラのオートパイロット

テスラの魅力はいろいろありますが、まずは独断でその魅力をランキングしてみます。

  1. クルマというものの再発明であるということ
  2. オートパイロット
  3. ファルコンウィングドアを含めたギミック

T型フォードが発売されたのが1908年ということなので、ガソリン車の歴史から100年を経て、電気自動車という新しいムーブメントが実用性のレベルに到達したのだと思います。

ガソリン車にはさまざまな不自由があります。エンジンを始動しなければいけないこと、エンジンが即その力を発揮するには回し続けなければいけないこと、常にタンクにガソリンや軽油の残量を維持しなければいけないこと、エンジンまわりの温度を一定に保たなければいけないこと。

電気自動車も含めて、普通のクルマにはイグニッションがあり、これをONにしないと走りません。(当たり前ですね)

でも、テスラにはイグニッションという概念はありません。キーを持ってクルマに近づくとアンロックされ、ドアノブをタッチするとドアが開く。乗り込んでブレーキペダルを踏むと、ドアは自動的に閉まり、シフトレバーをDレンジに入れてアクセルを踏めば動きます。イグニッションはないし、パーキングブレーキを手動で操作することもありません。降りるときも、パーキングボタンを押したら、あとは降りるだけ。自動的にパーキングブレーキがかかり、クルマから離れると自動的にロックされます。快適なカーライフを根本から考えたら「こうなりました!」というのが、テスラ最大の魅力だと思います。

そして次にくるのがオートパイロット。クルマに対する考え方は人それぞれいろいろあると思います。運転するのが楽しい、加速することが楽しい、スピードを出したい、ワインディングを駆け抜けるのが楽しい、ドリフトなどの限界姿勢をコントロールすることが楽しい。でも、おそらく日々クルマを使う中では、運転することの楽しさよりも、負担感が大きい。常にいろいろなことに目配りして、制限速度を守って、他のクルマの迷惑にならないように、交通をスムーズに維持するように、渋滞では前の車にきちんと追随するように。だからテスラはこの負担を最小限に軽減するために、先端技術を活用するわけです。

現状のテスラのオートパイロットは、まだまだ制限が多い。高速道路は150km/hまで設定できるようになっていますが、大きく曲がるカーブなどで乗っている人の安心感を守るような減速は不得意で、ちょっとアグレッシブな運転をします。それでも、車線と車間をクルマがコントロールしてくれるのは、安心感が全然違うし、この緻密さは人間より確実性が高い。一般道は常に標識を読んでいて、制限速度+10km/hまで設定できますが、現在のオートパイロットは、おそらく車線と車間を中心に制御しているので、バイク、自転車、駐車中のクルマなどに対するリアクションはほとんどなく、オートパイロット任せにしているとヒヤッとします。

もちろん、オートパイロットを必ず使わなければいけないわけではないので、普通に運転すれば良いのですが、車線と車間のアシストがあるだけでも、安全性には必ずプラスに寄与しているし、より他のこと(歩行者や自転車など)に注力できるので、確実に安全性は高まっていると感じます。

そしてファルコンウィングドア。目を引くのはこの上ないし、実用性としても、横幅が狭いところでは、上にスライドするように開くので、なかなか便利です。難点は閉めるときの操作で、4種類あります。(1)ピラーにあるスイッチ、(2)ドア本体にあるクローズボタン、(3)コンソールパネルの画面操作、(4)キーフォブですが、(2)のクローズボタンは開いている状態では相当上の方にあるので、子供は届かないし、ちょっと背が低めの女性なども難しいくらい。(1)は搭乗後に閉めるときには有効ですが、降りるときには、スイッチ操作をして閉じる前にドアの下から逃げるように脱出しなければいけないのが今ひとつ。結局は(3)か(4)で操作することが多くなります。キーフォブのトリプルクリックで、フロントやテールゲートも含めたすべてのドアを一撃で閉めるという機能はよく使います。

しかし何にしても、人から一番聞かれるのもオートパイロットの話で、注目度はとても高い。先日、Elon Muskがtwitterで「来月リリースのオートパイロットの新バージョンは絹のようになめらかで最高!」とツイートしていたので、6月のアップデートが待ち遠しい。通信機能が標準装備で、アップデートにワクワクするのも、テスラの大きな魅力のひとつです。

ワンペダルドライブ

カテゴリーとしてはガソリン車(ハイブリッドカー)ですが、ノートe-Powerが大人気のようです。燃費の良いクルマは、往々にして運転が楽しくないことが多いわけですが、ノートe-Powerはリーフと同じ駆動系で、走りの部分だけなら電気自動車。0-100km加速は約7.5秒だそうですから、これは同クラスのハイブリッドカーとは比較にならない軽快さです。

加速力だけではなく、アクセルをゆるめたとき(回生ブレーキ)の減速力も高く、ほとんどの道路ではブレーキはあまり使わないのは、我が家のModel XやBMW i3も一緒です。

実は2017年現在、国内で販売されているクルマで、この特性(ワンペダルドライブ)を持っているのは、テスラの全車種と、BMW i3と、ノートe-Powerです。リーフは回生ブレーキをかなり弱く設定して、ガソリン車と違和感のない操作感にすることを優先しているので、アクセルオフでも強い減速はしませんが、リーフの場合はシフトレバーをBレンジに入れると、ワンペダルドライブに近い感覚になります。

文章だけで読むと、どうということのないことに感じるかもしれないし、ガソリン車とのドライブフィールの違いが気になるかもしれません。でも、このワンペダルドライブ、本当にすばらしい!ということを強く言いたい。

我が家ではBMW i3の購入を決める前に、モニターキャンペーンで1週間ほど乗りました。22kWhの旧バッテリー搭載車、かつレンジエクステンダー搭載車です。アクセルひとつでクルマが思うように動かせるこの感覚、文章で表現するのは難しいですが、ガソリンエンジン車(電気自動車ユーザーはICEVと呼びます)は本当に我慢を強いられていたんだな、と強く思います。段差や上り坂、下り坂、狭い場所での前進後退、ワンペダルドライブでは、自然とどの程度アクセルを踏んでどうやって止まるかが読めるようになります。エンジンを少しずつふかして、段差を乗り越えたらあわててブレーキを踏むという動作はとても神経を使いますが、もっと自分の体のように扱えるわけです。

普通に走っているときも、加減速の動作が自然になり、積極的になります。走りは気持ち良く、減速時は運動エネルギーが回生されて燃費は良いままだし、ブレーキはほとんど使わないので、ブレーキパッドも減らない。唯一の難点は減速のレスポンスが良すぎて、慣れるまでぎこちないことだけですが、誰でも半日あれば慣れます。違和感は輸入車のウィンカー位置が反対にあることより小さいと思います!

ハイブリッドカーも回生ブレーキがありますが、モーターの容量がまったく違うので、回生力もまったく違います。先日テスラで、高台から降りる途中の電費表示ですが、まさかのマイナス。高地で100%充電してはいけないな、と思ったりもしました。