テスラのセンターコンソールを見た人は一様に驚きの声を上げます。17インチのモニターが縦型に据え付けられているのは、とてもインパクトがあります。
この画面、リアカメラや音楽再生、カレンダーなどの機能に切り替えることができ、2分割で半々に表示したりもできるのですが、なんと言ってもやはりメインのアプリケーションはナビです。良い意味でも悪い意味でも普通のクルマとは大いに違うのです。
テスラのナビは基本的にGoogle Mapのカスタム版になっています。Google Mapで見慣れた画面にテスラのロゴが重ねて表示されています。現在のモデルXには標準でLTEの通信モジュールが搭載されており、地図には常にGoogle Mapの最新データが表示されており、ほとんどの操作は巨大なiPadを操作するように、タッチやスワイプ、ピンチで直感的に使うことができます。
ナビの目的地設定は、通常はハンドルについている音声認識ボタンを押して音声で指示をします。最近のグーグル検索と同じように、目的地は正確に表現する必要がなく、少しくらい間違ったことを言っても、たいてい正しい目的地(または目的地候補リスト)を示してくれます。また、電話番号や住所を音声で言っても、目的地設定できます。手書き入力などの機能もありますが、冗談かと思うほど使いにくいので、ほぼ音声だけです。
写真でもわかる通り、渋滞情報はGoogle Mapと同じINRIX社の情報が使われています。利用者のスマートフォンなどの位置情報を集計して作る渋滞情報の精度はとても高い。国産カーナビが使っているVICSとは比較にならないほど情報量が多く、時間応答が良く、非常に正確です。もはや、莫大な設備投資をして情報を作っているのに幹線道路しか情報がなく、更新が遅く、しかもわざわざ自動車側にも複数のビーコンを装備する必要があるVICSなどやめて、もっと他のことに投資してもらいたいと思うのですが…。
地図としての基本機能は国産カーナビと比較にならないほど優れ、画面も大きく操作性も良く、ほとんど音声で処理できるのは、まさに未来のクルマという印象なのですが、一転してカーナビとしての機能は実は微妙です。
何より困るのは、山間部に行くとナビが使えない。海外製と思われるLTEモジュールはドコモ回線を利用していますが、おそらくFOMAプラスエリアなどの周波数に対応していないので、山間部で通信不能になります。あらかじめわかっていれば、その地域の地図をダウンロードしておいたり、目的地をセットしておくこともできるのですが、通信不能の地域に入ってしまうと、とにかく何もできません。いきなりナビがまったくない状態になってしまう。昔はそれが普通だった気がしますが、今の時代にナビなしは、ちょっと心細いことになります。
また、ナビとしての機能は、とにかく距離を最適化する傾向があり、(これはBMW i3のナビも同様なんですが)とても通れない道を選ぶことがしばしばあります。到達時刻は渋滞情報が加味されず、都心では現実より相当早く、山間部では現実より遅く計算されます。国産カーナビのように、難しい立体交差や首都高ランプを拡大表示したり、音声できめ細かく案内するような機能はありません。地図はGoogle Mapなのに、ナビ機能はGoogleのものではなく、カーナビとしては、スマートフォンのナビアプリや、Google Mapのナビ機能を使った方が、はるかに良いようです。実際、スマートフォンを併用するようになりました。
メイン画面のGoogle Mapでは、実際に案内中にどこを曲がるのか、わかりにくいのですが、インパネの左3分の1には拡大した現在地が表示されます。これは非常にわかりやすい。(写真はスーパーチャージャーで充電中のものなので、真ん中が速度計ではなく、充電情報になっています)
通信モジュールは将来的にハードウェア交換などができるといいな、と思います。ナビの方は、きっとソフトウェアアップデートで改善されることを期待しつつ…。