「これ、電気自動車なんです」という話をすると、EVのことをまったく知らない人(女性が多い)は「どこで充電するんですか?」という質問が多いのですが、ちょっとはクルマや電子機器が好きな人(男性が多い)は、「バッテリーは劣化しないのですか?」と聞かれることが多いようです。なかなかするどいところですね。
リーフに乗っている方はセグ欠けという形でバッテリーの劣化を目の当たりにすることが多いようです。リーフの場合、数年乗っていると、12セグメントあったバッテリー容量の2セグメントくらい欠ける(つまり20%くらい容量が減る)のは標準的みたいです。メーカーはバッテリー容量の保障をうたっていますが、これは5年以内に8セグメント以下になった場合は、9セグメント以上になるよう修理対応してくれるというものですが、あまり安心感につながる保障とは言い難い気がします。
リーフにはバッテリーの温度管理システムがないのですが、特に急速充電中はバッテリーの温度が上昇し、これが劣化の大きな原因となるとも言われています。テスラやBMW i3はバッテリー専用の冷却加熱システムが搭載されており、バッテリーモジュールにクーラントが張り巡らされています。充電中の温度上昇は冷却され、逆に冬の寒冷地など低温でバッテリーの性能が出ない場面では加熱されます。
日常利用で温度の次に問題になるのは、バッテリーの過充電です。リチウムイオン電池の特性として、100%充電の状態で長い時間放置し、さらに継ぎ足し充電を繰り返すと、バッテリーが急速に劣化することが知られています。ノートPCやスマートフォンでも、常にAC接続して100%の状態を保つと、バッテリー容量が減ってしまうことを経験した人も多いのではないでしょうか。XperiaやVAIOなど、もともとソニー製品だったものはいたわり充電という機能があり、あえてバッテリーを100%にしないことで寿命を延ばすことができます。
テスラはこの点について非常によく考えられています。通常利用時に何%まで充電するかは、設定画面やモバイルアプリで1%単位で設定することができます。下の画面で言うと、充電率のバーの下に▲マークがあり、これを動かすことでリミットを設定できます。100%充電を繰り返していると、「日常利用では100%充電を多用しない方が良い」という趣旨の警告も出します。バッテリー容量も大きいので、通常は90%設定にしておくことが推奨されています。80%や70%にするとなお良いのかというと、そうでもなく、90%とほぼ効果としては同じ程度とされています。
テスラは充電限度だけでなく、充電を何時に開始して、何時に終わりにするかも設定しておくことができます。オール電化で深夜電力を契約している場合、もっとも電力料金が安い時間だけ充電することで、EVの走行コストはかなり安くなります。
テスラはこのようにきめ細かく充電設定ができることもあり、自宅に置いている間は(充電していない場合でも)充電器に接続しておくことが推奨されています。通常はバッテリーが消費される補助機器にも、接続中は充電器から電流が供給されるので、バッテリーの寿命にプラスの効果があります。
充電を100%にしないことには、もうひとつメリットがあります。充電直後でも回生ブレーキが有効だということです。EVは減速のエネルギーを回生させて充電することができますが、100%充電では回生できず、減速もしないので、ブレーキを踏む必要があります。例えば充電場所が高台にある場合、クルマを始動して下り坂をどんどん下りるという状況を考えると、100%充電は避けたいのです。
BMW i3は、充電限度の設定についてはテスラとはまったく違うポリシーで作られています。i3の基本設定は、充電器を接続すると、100%まで充電するようになっています。計画的に充電するためには、まず1週間の自動車の利用開始時刻を曜日ごとに設定します。例えば、これを毎日朝8時に設定しておけば、常に朝8時には100%充電になるように制御されます。さらに、充電の時間帯を設定することができるので、深夜電力の時間帯にセットしておく(i3ではオフピーク料金充電というメニューになっている)ことで電気代を節約できます。
まずi3の最大の問題は、常に100%充電しようとすることで、これを避けるには、適当なところでケーブルを抜くしかありません。バッテリー寿命には悪影響だし、家が高台にあっても、毎日、回生ブレーキが利かない状態での出発となるわけです。これは改善してほしいポイントです。
次に、オフピーク料金充電を設定しても、翌朝の出発時刻までに100%充電できないと判断すると、ただちに充電を開始してしまいます。33kWのi3の場合、AC充電は最大200V15A(約3kW)で、ほぼゼロに近い状態からだと、充電に12時間ほどかかります。半分くらい残っていても、「23時まで待ってから充電開始では朝までに100%行かないかもしれない」と判断するらしく、勝手に即充電に切り替えられてしまいます。この動作の意味がわからず、何度オフピーク料金充電に設定しても、勝手に戻ってしまうので、最初はかなり戸惑いました。充電限度を設定する機能はなく、充電電流は制限できるのですが、電流を制限すれば余計に充電時間が長くなり、オフピーク料金充電はほとんど機能しなくなります。
結局のところ、i3の充電を望ましい形で制御するには、ケーブルの抜き差ししかないという状況で、トホホ感が漂います。せめて電源回路にタイマーを仕込みたいな、と思っています。
ご質問よろしいでしょうか?急速充電でバッテリーの劣化は起こるのでしょうか?i3にとても魅力を感じているのですが、自宅充電が無理な場合は急速充電を利用するしかないので、バッテリーの劣化が気になります。
かなり遅い回答になってしまって申し訳ありません。
急速充電によるバッテリーの劣化は、主に充電中の過熱によって起きるようです。テスラやBMWは水冷で、急速充電中もバッテリーの温度は安定していますから、劣化はあまり気にしなくて良いようです。
下のサイトにバッテリー劣化のグラフや、急速充電のことも書いてあります。この例では7万kmで8%くらいの劣化になっています。
https://www.bmwblog.com/2013/04/25/understanding-battery-capacity-loss/
急速充電の方がバッテリーへの負担は大きいようですが、差違はそれほど大きくはないようですね。急速充電を繰り返して容量が減ってしまったという話はあまり聞きませんが、テスラの場合は、急速充電だけを繰り返すと、急速充電器の速度を落とす制御は入っているようで、これは一部のテスラオーナーの間で話題になっていました。とはいっても、充電時間が5分ほど長くなる程度なので、まあ、それほど気にしすぎないのが一番じゃないかと思います。
https://electrek.co/2017/05/07/tesla-limits-supercharging-speed-number-charges/
コメント失礼します。
i3 94Ah/33kWh Rexを所有しだした者ですが、冬場になってから家庭での充電もかなり時間がかかるようになりました。寒さゆえに仕方が無いと思うのですが、深夜料金帯をメインで充電するようにしており、夏場より充電の回数が増えるとともに疑問も出てきました。というのも、週末は出かけるであろうと思いほぼ100%近くを目指すようバッテリー減り具合で木曜金曜と連日深夜充電をします。木曜は残量40%ほど金曜は残量70%ほどから充電開始をしていますが、このように連日継ぎ足しで翌朝7時の充電終了→中途半端な%で次の日充電へ持ち越しのような使い方は、バッテリーにはよろしくないでしょうか??もしくは、残量60%を切ったらその晩は充電開始様な充電スタイルのほうがいいのでしょうか?
ご指導いただければ幸いです。よろしくお願いします。
電池の劣化にはいろいろな条件がありますが、どうも一番影響が大きいのは、極端に満充電の状態、または極端に空っぽの状態を長時間放置するのがもっとも悪影響が大きいようです。空っぽで長時間放置する人は少ないとは思いますが、100%で長時間放置する人は、けっこういますよね。ノートPCなどでも電源に接続したままで、常に100%のあたりで「継ぎ足し充電」をしていると、電池は極端に劣化してしまいます。
そう考えると、土曜日の朝にほぼ100%になるように充電して、そこから比較的すぐ使うという利用パターンは良い使い方のように思います。より良くという意味では、(長距離を乗ることがわかっているとき以外は)100%ではなく、90%くらいに抑えておくとさらに電池に優しいのかもしれません。でも、i3は充電上限設定できないんですよね。自分で計算するにしても、残量をもとに時間設定を調節するのは、ちょっと面倒ですね。